アレハンドロ・アメナーバル監督「アザーズ」はゆるふわ癒し系ホラー

ホラー映画に興味があるけど、グロテスクな映像は苦手。そんな方にお勧めのDVDです。

ひっそりと佇むお屋敷を舞台に、静かな雰囲気の中にひたひたと恐怖が迫る……

一人で週末の夜に、あたたかい飲み物をいただきながらゆったり鑑賞したい、そんなDVDです。

ニコール・キッドマン扮する美しい母親が、二人の子供と暮らす霧に包まれたお屋敷。

三人の奉公人がその屋敷を訪れてから、不思議な出来事が起こり始めます。

この怖さは、バーンと分かりやすい怖さではなく、じわじわくる不可思議さです。

そしてホラーな展開のはずなのに、移り行く映像は上品でゆったりとしていて、静かな世界観に惹き込まれるのです。

上品な金髪の人妻ニコール・キッドマン(グレース・ケリーを意識したそうです)が、追いつめられて神経をぴりぴりさせていく姿は、その白い肌もあいまって不吉な美しさにあふれています。彼女の美貌と演技だけでも見る価値ありです。

最後にはどんでん返しがあり、物悲しくも後味の悪くない、淡々とした余韻が残ります。

ある種のハッピーエンドと言えなくもない、ゆるふわ癒し系なホラー映画なのです。

また劇中に張り巡らされた伏線の数々も見どころ。

「これがあのどんでん返しにつながっていたのか」と発見がたくさんあります。

最後まで観たあとは、もう一度最初から見直すことをお勧めします。

箱庭のような美しい世界観を閉じ込めた、ホラーらしからぬホラー映画と言えるでしょう。